レクイエム#008


ウチに戻ると

「おかえり」

ダイニングで
新聞片手に朝食を摂っていた
スーツ姿のパパと遭遇する。


「パパ、今日は出勤
ゆっくりなんだね」

「今日はテレビ会議が
ない日だからな」

パパは
トーストをかじりながら
ジャージ姿の私に
笑い掛けた。


「朝練。よく続くなあ。

今日もシンスケくんと
一緒だったのかい?」


「えッ、あ、うんッ」


思わぬトコロから
シンスケの名前が出てきて

動揺する。


「でも、今日は帰ってくるの
遅かったわよね」


ママがキッチンの奥から
プロテインジュースの粉と
水の入ったシェイカーを
持ってきてくれて


「あッ、うんッ。

いつもと違うコース
走ってたんだッ」


私はそれを受け取ると

プロテインジュースの粉を
シェイカーに入れ

シャカシャカと
ココロの中の焦りを
誤魔化した。


なのに

「違うコースって?」

「あッ、えッ」

ママがさらに
話題に食いついてくるッ。


まさか、そんなトコロを
ツッコまれるとは

深く考えずに
答えてしまっていたから

「え〜と、あのねッ」

好奇心いっぱいの
ママの瞳から目を逸らしッ

「…まあ、その
いろいろ、ね」

シャカシャカシャカッ。

私は激しく
シェイカーを振り続ける。


「…おかしいわね。

トーコ。
何か隠しているでしょう」

ぎくッ。