でも。

「便秘の薬を
買って帰るコトに

セイが意義を唱えなかったと
ゆ〜コトは…」

セイもそのうち
帰宅するって意味だよね。


「…早く学校に行こうッ」


私は大急ぎで
シャワーを浴びて

髪を乾かす。


問題が山積みで

どの話をどのタイミングで
切り出せばよいのやら。


「……」


考えれば考える程
アタマの中が真っ白になり

私は本来
考えるという作業に
不向きな人間なのだと
言い聞かせ

玄関でママから
お弁当を受け取ると

私はパパと一緒に家を出た。


「髪の毛、生乾きのままで
風邪をひかないか?」

パパが私を心配する。


「ちゃんと乾かしてたら
学校遅刻しちゃうもんッ」


ドライヤーなら
部室にあるしッ


「ちゃんと休み時間に
ブローするからッ」


「そうか。

髪の毛が多いのも
何かと不便なモノなんだな」


パパが
頭皮に生き残っていた
弱々しい髪の毛達を

淋しそうに撫でつけた。


「……」
「……」


…この手の話題は

何かとびみょ〜に
気を遣うなッ。


パパのアタマから
意識的に視線を逸らすと

遥か遠く前方に

「!!!」

見覚えのあるシルエットッ。


「…あれに見えるはッ」

水族館デートでも
被っていたニット帽ッ。


「前を歩いているの

シンスケくんじゃ
ないのか?」

ってッ。


「お〜い、シンスケくん」


パパッ!

アナタはどうして
愛娘の空気を読まず

声を
掛けてしまうんですかッ。