それにしても
朝、タクシーで別れた後より
シンスケの暗さが
一層増していてッ。
「……」
「……」
タクシーを降りて
私と別れた後
家に帰って
家族に何か言われたのかな。
なんて
心配していた私の背後で
「…いいなあ。
シャンプーの香り」
シンスケの
ゾクリ、とするような
ひと言に
私は思わず固まった。
「……」
「俺なんか、石鹸で
済んじゃうんだもんな〜」
…まさか
シンスケの方から
アクションがあろうとはッ。
なのにッ
「トーコ!
おッはようッ!」
こんなときに限って
こんなタイミングで
今朝も元気な
ナンノちゃんに
遭遇してしまう私ってッ!
「あはッ、おはよ…」
私は神様に
見捨てられているのかな。
「何よお。
生乾きの髪に湿気た顔ッ!
柳の下にいたら
幽霊に間違われて
ウチの犬に
吠えられるわよッ」
「……」
ナンノは当たり前のように
列に割り込んで
私の横に自分の場所を
確保する。
…まさか。
ナンノってば
シンスケに気づいていない?
「ほら、電車来たわよ」
ナンノに促され
私は電車に乗り込んだ。
『ご乗車の際は
お足元にご注意くださ〜い』
誰かが私達を笑っている。
月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ
レクイエム#008
≪〜完〜≫
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