この童謡は
きれい好きなママを
歌っているだけで
磨いているのは
部屋の中であって
オヤジのアタマでは
ありませんッ。
私はココロの中で
必死にフォローを
繰り返していたッ。
『ピッカピカ〜の♪』
「……」
『ツルッツル〜の
ピッピカリ〜ン♪』
どうやら
この陽気な着信音の主は
ナンノちゃんの
真後ろにいる
鼻かみビジネスマンッ
「どうして
さっさと
止めないのかしら!」
ナンノの眉間に
本日一番の
深いシワが寄るッ。
グジグジと
鼻をかむのに手いっぱいで
「ちいいんッ、スンッ」
着信音を止める
余裕もないらしく
「……」
早く止めろよ、と
言わんばかりに
制服組が苛立ちながら
そんなオトコの様子を
伺っていた。
だけど
鼻をかんでいるトコロを
直視したくなかったのか
ナンノちゃんだけが
シンスケのいる方向に
振り向かずにいてくれたのは
ありがたいッ。
「はいは〜い。
いつも
お世話になってま〜す」
調子のいい、おおきな声。
ハタ迷惑なビジネスマンは
「いやあ。構いませんよ〜」
ケータイで
そのまま話し続け
乗客みんなの不快指数を
ひとりで上げまくっていた。
「午後には
戻れると思うので〜
はいは〜い」
悪目立ちするコトに
何の抵抗もないようで
まさに電車の中は
鼻かみビジネスマン
オンステージッ!
「あんなので
よくビジネスマンが
勤まってるわよねッ」