ナンノちゃんの
発するセリフの語尾も
切れ味鋭く。


次の駅の到着を知らせる
放送が
車内に流れてきたときは

本当に、天の助けかと
思いましたッ。


だけど。

「ほら、ナンノ!」

満員電車の
乗客をかき別けながら

ナンノの腕を引っ張って
電車を降りようとした
その瞬間

「え、あッ」

私のコートが
何かに引っ掛かって

「ボタンとか
ちぎれてないッ!?」

ホームの上で
超アセるハメになろうとは!


そんな私のコートの状態を
心配する様子もなく

「ああッ。ムカつくッ!」

ナンノちゃんは
走り去る電車に向かって
アカンベを
かましていますッ。


「電車を降りるときに
あのオッサンの足ッ

思いっきり
踏んでやったのにッ」


はいッ!?

「スーツなんて
着てるクセに
軍靴なんて履いててさッ」

こっちの足の方が
痛かったわよッ、ってッ。


「……」

…ナンノちゃんッ。

そ〜ゆ〜仕返しって
公衆道徳的に
アリ、なんですかッ。


走り去る電車に
睨みを利かせる

そんなナンノの後ろを

亡霊のようなシンスケが
通り過ぎ…。