「……」
「……」

絶妙すぎる
そのタイミングに

「あはッ」

私が胸を撫で下ろすと

「ちょっと、トーコッ
何がおかしいのッ!?」

ナンノちゃんの怒りの矛先が
私の方にシフトチェンジッ。


「トーコだって
あのオッサンと同じよッ。

生乾きの髪で
登校するなんて非常識

やめなさいよねッ」


いっしょに歩く私が
恥ずかしいでしょッ

ってッ。


…お忘れのようですが。

みんなが並んでいた列に
割り込んでまでして
私の隣りを確保したのは

ナンノちゃんッ
アナタですからねッ。


…などと

言い返す勇気も気力もなく。


「……」

私は無言で定期券を出すべく

自分のコートの中に
手を突っ込んで

「ん?」

ポケットの中の
身に覚えのない感触に
足が止まる。


「トーコ!
何やってるのよッ!

改札機
滞らせちゃダメじゃない!」


「あッ、うんッ」

私は改札機を通り抜け

歩きながら
自分のポケットの中の
“ソレ”を
恐る恐る取り出してみた。