レクイエム#010
「…友達だって
信じてたのにッ!」
私のポケットに入っていた
シンスケのケータイを
握りしめ
ナンノちゃんが
私を責める。
「いえッ、あのッ、ね。
私も何が何だか
わからなくてッ」
「何がわからない、よッ!
私にナイショで
シンスケくんと逢って
いたんでしょうがッ!」
…確かに
シンスケとは一緒でした。
一緒でしたけどッ!
「それは…!」
「トーコが誘ったの?」
「うんッ、でもねッ
それはッ!」
「誘ったのねッ!?」
「だからッ!」
釈明しなければ、と
気ばかりが焦りッ
どこからどこまでを
どういう風に
ナンノちゃんに
説明すればいいのやらッ。
「ハッキリしなさいよッ!」
「あのッ、そのッ、あのッ」
シンスケは口が堅いし
素直で
ヒトの裏なんか
疑いもしないから
協力者としては
最適な人物だと思った
なんて
とてもじゃないけど
ナンノちゃんには
言えないし。
まさか
こういうややこしい展開に
なるなんて。
「シンスケくんを誘い出して
いったい
何をしていたのッ!?」
ナンノちゃんの剣幕に
「……」
額から噴き出す汗が
止まらないッ。