「…ちょっと
怪我しちゃってさ。

だから帽子
返してくれる?」


シンスケが
ナンノちゃんから
帽子を受け取りながら

私の方をチラリ、見て

気まずそうに
笑って見せる。


「あ、あはッ」

…確かにね。


怪我をしたアタマなら
坊主を
からかわれるコトはナイし

先生だって
ニット帽を脱げ、と
強要したりはしないだろう。


あの状態から
よくそんなアイデアを
思いついたモノだ、と

感心してしまう。


「帽子。返してくれる?」

シンスケは
ナンノから取り戻した帽子を
しっかりと被り直した。


そんなシンスケに

「怪我って、どうしてッ!?
いつどこでどんな風に!?」


ナンノちゃんが
知りたがるのも当然で。


「…あのね、ナンノ。

シンスケにだって
思い出したくないコトが…」


シンスケに
助け船を出したつもりが


「まさかッ!

トーコが
怪我させたとか!?」


…逆効果。


「そうなのね!?
そうなんでしょッ!?」