レクイエム#011


「ケータイの暗証番号なんか
どうやって知ったんだろう」


学校を終え
ウチに帰り着いても

その謎で
アタマがいっぱいで。


玄関に腰を下ろし
自分のケータイを
見つめていた。


「こうやって
覗き見てるとか?」


「!!」


背後にセイがいるコトに
気づかなかったとは

一生の不覚ッ!


「暗証番号が
どうかしたのかな?」


「別にッ!」

「……」


「そのッ単なる好奇心でッ」

「……」


「だからッ!!!」

「……」


私のココロの中を
見透かしでもするように

セイは黙って
私の目を見つめている。


「…セイはズルイッ」

「何がだ?」


セイの端正な顔が
ぐぐぐ、と
さらに至近距離まで
近づいてきた。


「…知ってるクセにッ」

吸い込まれそうな
深い色した
その瞳がズルイですッ。


隠し切れない
止めどなく吹き出す汗に

「…もういいよッ」

セイのペースに
持ち込まれる前に

この場から逃げ出そうとした
私のセーターを

「ちょっと待て」

セイが摘まんで

私の退室を阻んでくる。


「襟ぐりが伸びる…ッ!」

振り向いて抗議する私の
今度は口に
人差し指を突っ込んでッ

左右に
思い切り引っ張ったッ!


「ばびぶんぼぼッ!」

「“何すんのよ”?」


通りがかったママが

私の発したコトバを
のどかに翻訳してみせるッ。


「母さん。

トーコがまた何やら
隠しゴトしてるみたいだよ」


セイがママに、ご注進ッ!


「あら、そうなの?」

「ぢがぶがだッ」


私はモガきながら

懸命に
セイの手を払い除けた。