「キリエさんって

トーコ達が通っていた
小学校の保健室の先生

でしょ?」


「え」


その声に振り返ると

「そうよね?、セイ」

ママが
掃除機を掛けながら
笑っている。


「…小学校のときの
保健室の先生って」


確かセイの火傷の痕を
知っていて

在学中、隠し通すのに
協力してくれていた、って

セイが前に話してくれていた
あの先生…?


「年賀状を書くとき

トーコは毎年
キリエ先生の名前を
書き損じしちゃっては
大騒ぎしてたから

ママ、すっごく
印象に残ってるのよね〜」

え。


「小学生時代のトーコは

画数の多い漢字を
ひらがなの5倍増しくらい
おおきく書いてたからな」


「“先生”の“生”の字を
書くスペースがなくなって

いっつも1行が
L字型になっちゃってねえ」


「トーコは何をさせても
計画性がないんだよな」


「毎年、郵便局に
ハガキを交換しに行くのが
ママ、すっごく
恥ずかしかったわ!」


大袈裟なジェスチャーを
交えながら

ママとセイが
ふたりして爆笑していて。


「…あは」

な〜んだ。


別に
私に隠しゴトしてたワケじゃ
なかったんだ。


「あはははは」

ココロの底から安堵した。


「…笑ってるぞ」

「笑ってるわね」


気がつけば

恥の自覚がないとばかりに

私を見つめる
ふたりの視線ッ。