レクイエム#012


「何だろう、これ…!」

“kyrie”という
アドレスから出された
そのメールには

シンスケのフルネームだけが
書かれていて。


「リンク文字に
なってるけど…」

ここをクリックしたら
どこかのHPに繋がる、って
コトなんだろうか。


「…気味が悪いな」

誰かのイタズラなのか。


「よく見ると

“kirie”じゃなく
“kyrie”だしッ」


私はケータイの画面と
にらめっこしながら

ベッドの上に
仰向けになる。


「…やだな。
知らないヒトからの
迷惑メールなんて。

シンスケが
ケータイを紛失したのと
何かカンケイあるのかな」


…嫌な予感。


「ふ〜ん。シンスケさんが
ケータイを無くしたのか。

なるほどね」


「!!!」

突然、私の耳元で
セイの声がして

「ちょっとッ!

また勝手にヒトの部屋に
入ってきてるッ!」

私はベッドから飛び起きた。


「ケータイの
4ケタの暗証番号による
ロックなんて

気休めみたいなモノ
だからな」

セイが
私の持っていたケータイを
私の手ごと掴まえる。


「やっぱ
お前のケータイにも
このメールが届いていたか」

「え?」

「ほら、ウワサをすれば」

セイの答えを聞く間もなく

私の手の中で
ケータイのコール音が
鳴り出した。


「…シンスケから」

「出ろよ」