レクイエム#013


「テツオさんまで
巻き込んで

白黒ハッキリさせようなんて
趣味悪いからッ」

私はシンスケに

【移動中で
ケータイの受信状態が
悪いから】

言い訳メールを送りながら

セイのシャツの背中を
引っ張った。


「お前にも
言い訳の機会はやるから
安心しろ」

なんてッ

ベテラン刑事が
犯人に言い捨てるような
セリフを吐きながら

セイが私の部屋のドアを
勢いよく開けた

その瞬間。

「おッ」

帰宅したてのパパと
出くわして。


「あ、父さん」

「あはッ、お帰りなさい」


「危なかった…。

せっかくの中華まんが
パアになるトコだった」

パパが持っていた紙袋を
大事そうに、ひとナデする。


「中華まん?」

パパが抱きかかえていた
紙袋。

見覚えのある
鳥に梅の花の
このデザイン…。


「…もしかして
その中華まんって

チャーシューまん?」


「…お前、さすがに
鼻が利くな」

パパとセイが
不憫そうな目で
笑っててッ。


「嗅ぎ分けたんじゃなく
食べたコトが…」

ハッ。

「…食べたコトが?」

セイの私を見つめる目が
厳しくなった。


「食べたコトがあるヒトが
うらやましいな、って」

誤魔化しても
無駄ですかッ。