「なんだ。トーコも
ここの中華まんのウワサ
聞いてたのか。
美味しいモノ好きな
女性の間では
けっこう有名らしいね」
なんて
思わぬパパのフォローに
このヒトの子どもに生まれた
幸運を
感じずにはいられないッ。
「屋台で朝と昼どきだけ
売られてるらしいんだけど」
「……」
いぶかしげなセイの視線を
自分の横顔に感じながら
私達はリビングに移動した。
「あら、だったら買うのも
大変だったんじゃなくて?」
キッチンから出てきたママが
パパから
紙袋を受け取りながら
嬉しそうに
中を覗き込んでいる。
…パパの会社の近くとはいえ
あまりにもタイムリーでは
ありませんか?
「ほら
ママも覚えてるだろ?
セイ達がお世話になってる
テツオ先生」
え。
「今日、近くまで
来たモノだから、って
昼過ぎだったかな。
わざわざ
差し入れしにきてくれて」
ってッ。
パパの口から証言される
事実に
深読みしたのは
私だけではなかった。
「ママの好みを覚えてて
くれたんだね」
パパとママは
テツオさんの行為を
好意的に受け取って
いるけれど。
「…絶対
裏に何かあるよな」