いつの間にか
私の背後に忍び寄っていた
セイが

チラリ、私を見ていて。


「…そんなコトッ。
あるワケないじゃないッ」

「……」

「テツオさんが
パパを狙ってるなんて
あり得ないからッ」


「…父さんを狙ってる?」

あッッ!!

自分の失言に
パニックを
起こしそうになる。


「テツオさんが?
何の為に?」

セイのおおきな目が光るッ。


「……」
「……」

緊迫する我が子達をよそに

「これ、冷えてても
すっごく美味しいわ!」

夕食前にも関わらず
その匂いに負けて

ママがチャーシューまんに
かぶりついていた。


「そこの店。
汁そばとか中華がゆも
美味いって評判らしいぞ」

「あら、じゃあ今度
買ってきてくださいな」


「会社を抜けて
長蛇の列を並ぶのは
ちょっと難しいかなあ」

ママの無理難題に

パパが困った笑顔を
私達に向けてきた。


「セイ。悪いけど
頼まれてやってくれるかな」


「…もちろん」

爽やかな笑顔を
取り繕いながら

セイが私の腰を
抱えるようにして

私を自分の部屋に
連れ込んだ。


「洗いざらい
説明して貰おうか」

「……」

もう逃げられない、よね。