「安心しろ。

何があったか知らないが

この画像の貼り付け先には
誰もアクセスできないよう
手は打っておいたから」

「え」


「通常のサーバーしか
経由していないみたいだから

犯人も辿っていけば
すぐに身元も割れるだろう」


セイがパソコンの
丸まった矢印をクリックすると

「ほら。
ページを更新させたら
この通り」

【No request】の文字が
映し出された。


「…あ」

私がメールを見ていた
あのわずかな間に

もうそこまで
手を打っていて
くれていたなんて。


「あは」

鮮やかすぎる手筈が
ちょっと嫌味だけど。


でも。

よかった。

助かった。


「…ありがと」

ホッと胸を撫でおろす
私のアタマを

「ありがとうじゃ
ないっつ〜の!」

セイが鷲掴みして
前後に
おおきく揺さぶってくる。


「ったく!

朝っぱらから
シンスケさんに
妙なメール
送りつけられてきた
ときから

嫌〜な予感は
あったんだけどな」


「妙な…メール?」


「カンフー映画に出てくる
坊主達って
カッコイイと思う?、とか

出家したのを
親に秘密にしている武道家が

実家に帰るときって
どうするんだろうね、とか」


“もしも”話ばっかり
書いてよこしていた、って

セイのブリザード級の
冷たい視線が

私に向けられいて。


「あはははは」

シンスケが坊主頭のコトを
“セイに相談した”って
言っていたのは

このコトだったのか。


「笑ってんじゃねえよ!

あの街には
いろいろと黒いウワサが
あるからさ。

もしかして、お前に
何かあったのかも、と
思ったら

そんな妙なメールすら
無視できねえだろうが!」


「…ふ〜ん」

「なんだよ!
心配したらおかしいか!」

「別にッ」

セイが私のコトを
心配してくれてたって
聴かされても

全然嬉しくないのは

たぶん…。


「その黒いウワサを
教えてくれたのって

髪の毛をこう
横にひとつに束ねた…」


あの女性の存在だ。