レクイエム#014


【直接説明する機会を私に!】

レポート用紙にしたためて
セイのドアの隙間に
差し入れる。

【私のつたない文章なんて
誤解を招くだけだから】

何枚も何枚も
今の気持ちをしたためた。

セイの部屋からは
ハードロックがガンガン
流されていて。

私の存在など
もはや
雑念でしかないみたいな
扱いだった。


「…トーコ。
オトコにはいろいろ
事情があってだな。

そんなトコロに
お前にいられるのって

その…」


…若い男子の
シークレットタイムッ。


何かを勘違いしたパパが

廊下に座り込んでいた
私の腕を取って

リビングに
連れて行こうとした

そのとき。


ハードロックの音楽が
鳴りやんで

ガチャリ、と
セイの部屋のドアが開き

ズズズと私のカラダが
ドアの裏っ側と壁の間に
挟まれるッ。


「セイ、出掛けるのか?」

え?

パパのセリフに
ドア越しに
セイの方を覗き見ると

上品な細身のライダースを
着たセイが
立っていた。


ひえええええ。
カッコいいッ!!!!

などと
感動している場合では
ないッ。


「セイ、夕食は?」

キッチンから顔を出す
ママに

「ごめん。母さん。
今夜は帰れそうにない」

セイは申し訳なさそうに
笑顔を向けて

「父さん。
明日、チャーシューまん
忘れずに買って帰るから」

先の尖ったブーツを持って
玄関へと歩き出した。