「チャーシューまん
買ってくる、って

…お店わかるの?」

私の質問に

ブーツを履いていたセイが
ふと視線を私に上げる。


「あの黒いコックコートの
色男がいる店を
探せばいいんだろ?」

セイがシラけた目をして
顔を背けた。


「何よッ!

そんな意地悪な言い方
するコトないじゃないッ」

そのオシャレな恰好は

やはり
あのアジアンビューティーを
意識してるんですかッ。


「まさか営業妨害とか
よからぬコトを…!」

「…お前。俺のコト
どんな人間だと思ってるの?」


「…どんなってッ」

このタイミングで
面と向かって
アナタの何を評価しろと
言うんでしょうか。


「正直に答えてみろよ」

「…素敵なヒト?」

「……」
「……」

「フッ」

サディスティックなセイの
口の端が片方だけ上がる。


いやあああああ。

「ジョーダンですッ
ごめんなさいいいいッ」


「お前の分の
チャーシューまんは
要らないようだな!」

「要るしッ」

「……」

「ついでを言えば
汁そばもッ」

「……」

「あの店のお客さん
みんな必ず買ってたしッ

スープがすんごい
いい匂いでねッ!」


「……」
「……」


「お前。
自分の置かれている立場が
本当に
理解できているのか?」


「あはッ」

「……」

「あははははッ?」


「…よし、わかった。

お前の代わりに、それ
俺が食べてきてやるよ」

ってッ

「超、意地悪ッ!!!」