「中華そばなんて

お前が学校から
帰ってくるのを待ってたら
麺が伸びちまうだろうが」


「セイは
アタマがいいんだしッ
それくらい
工夫すればいいじゃないッ」

「……」

「セイがお昼休みに
学校に届けてくれるとか!」

「俺は
そば屋の出前持ちか?」


油まみれの
白いユニフォームの
襟元から覗く

洗いざらしの白いTシャツ。

長靴姿のセイが
オカ持ちを持って

昭和な自転車と共に
現れる…。


「けっこう
似合っちゃうかもッ」


空想にふける
私を置きざりにして

「あッ、やだッ
セイ、待ってよッ!」

玄関のドアを
閉めようとしたセイに


「いいもんねッ。

早起きして
自分で買いに行くもん
ね〜っだッ!」


大声で自己主張して

ひと叩きしようとした
玄関のドアが

ガチャ。

「わッ」

玄関のドアが再び開いて

…驚いた。


「…あのラーメン屋の主人の
つくったモノが

そんなに恋しいか」


「え?」


わずか数センチの
ドアの隙間から覗く

セイの目が光っていて

「…ごっくんッ」

その緊張感に
思わず私は息を呑む。