いつもみたいに
勢いよくドアを開けて
私に軽口を
叩いてくれていたら
私だって
アカンベのひとつも
返せただろうけれど。
「…ラーメン屋じゃ
ないしッ」
「ふん。
あの街のヤバさを
目の当たりにしても
それでも
あの場所へ行こうだなんて
ヤツの
気が知れないな」
なんて
セイが意地悪ばかり
言うもんだから。
「あの屋台が出てる時間帯は
太極拳の参加者で
賑わってるしッ」
「……」
「自転車を使えば
たとえ
誰かに追い掛け回されても
振り切る自信あるもんねッ」
私も、もう
引き下がれなくなって
しまっていた。
「相手がひとりだとは
限らないだろうが」
「じゃあ、ケータイで
110番するしッ」
「自分のいる位置を
お前が
とっさに説明できるとは
思えないけど?」
むむッ。
「じゃあッ
物凄おおおおおおく
おおきな声で
叫ぶからッ!」
「……」
「セイや警察が
駆けつけてくれなくたって
あの街には
ワンオーがいるもんねッ」
「…ワンオー、ね」
セイがクスリと
私をバカにするように
苦笑いする。
「お前といい
シンスケさんといい
どうしてあんな連中を
信用なんて出来るのか」
「え」