「だって、そうだろう?
同じ手口の通り魔事件が
頻発していて
それが
単なるウワサではなく
被害状況を目の当たりに
してるってのにさ」
警察に知らせるでもなく
住民に警戒を
呼び掛けるでもなく。
「…言われてみれば」
確かにその通りだ。
最初にワンオーに
囲まれたときに
そんな事件があるから
気をつけろと
言われていたら…。
「街が平和だと
自分達の存在意義も
なくなっちまうから」
まるで自分達に
街を仕切る特権でも
与えられているかのような
勘違いをしながら
「街をお揃いの恰好で
練り歩くバカの集まり!」
「バカの集まりって…」
セイは
自分ができる人間だから
出来ない人間を
小バカにするような
トコロがある。
別に私自身を
否定されたワケでは
なかったのだけれど
「でも。アタマを剃られた
シンスケを
保護してくれたのは
そのワンオー
だったんだしッ」
「だから?」
「事件を見て見ぬふりだって
できたのに」
声を掛けて
保護してくれたってコトは
「ワンオーの中にも
困っているヒトを
見捨てられない
正義感のある人間もいるって
コトじゃないのかな」
気がつくと
よくも知らないワンオーを
庇っている自分がいて。
「ふん」
「何よッ。
鼻で笑うコト
ないじゃないッ」
「お前ってさ。
ホント
おめでたいヤツだよな」