むおおおおおおお。

「どういう意味かなッ」


「過去にあれだけ
たくさん
怖い目に遭ってきたクセに

まだ誰かを
手放しで信じようなんて」


喉元すぎれば熱さ忘れる。


「…それってッ
私のコトッ
学ばない人間だ、って
言いたいのかなッ」


「…羨ましい、ってコト」


セイはマブタをそっと閉じ
ちいさく笑った。


「…何よッ」

その思いっきりな
上から目線はッ!

「私だってッ
過去にあった色んなコトを
忘れてるワケじゃないしッ」

私は右手に残る
ナイフの傷跡だって

手を握り込む度に
過去を思い出させて。


「だけどッ!

毒入りケーキを
食べたからって

いちいちケーキを
嫌いになったりしてたら

人生の楽しみの半分を
捨てるような
モンじゃないッ!?」


「お前の人生の
しあわせの半分が
ケーキで
占められていたとはな!」

セイがお腹を抱えて
笑っててッ!

「むおおおおおおおッ」

セイに笑われて
赤面してしまう自分が
悔しいですッ。


「セイになんて
もう何にも
頼まないからッ!」

いってらっしゃい!、と
玄関のドアを勢いよく閉めて

私が自分の不機嫌さを
アピールする。


「…羨ましい、ってコト」

それは

今もなお、過去の事件に
縛られ苦しんでいたセイが
漏らした
本音だったコトに

このときの私が
気づくワケもなかった。





月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ

レクイエム#014

≪〜完〜≫


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