レクイエム#015


キッチンから
唐揚げをあげる
いい音がする。

ゴマ油の香り。

お味噌汁の具に
なるハズだったワカメが

中華スープの中を
泳いでいた。


テーブルの真ん中には
4分割された
チャーシューまん。

1個と半分。


「…残りの
チャーシューまんは
冷凍でもしたの?」


「袋の中には
もともと2個しか
入ってなかったし

ママがさっき半分
食べちゃったからな」

パパが
唐揚げを皿に取るママを
見る。


「あらッ!

テツオさんは
私に、って
くださったんだから

私が食べた、って
みんなから
非難される筋合いは
ないわよ〜」

ママは
とってもご機嫌だ。


だけど。

4人家族の家庭への
差し入れが2個ッ。


「……」

そこに
テツオさんの意図を
勘ぐってしまう私は

イケない子でしょうか。


「本当に素敵な女性よね。
テツオさん」


あげたての唐揚げを

ママがダイニングに
運んでくる。


「美人でスタイルもよくて
料理も上手で

おまけに
お医者さまだなんて

まさに
パーフェクト・レディー!」


「……」