「こんなに
美味しいチャーシューまん
戴いちゃって

今度、テツオさんを
我が家の夕食にでも
ご招待しなくちゃね」


何も知らないママが
チャーシューまんを
味わいながら

恐ろしい提案をする。


「テツオさんッ。

ああ見えて
結構、忙しいヒトだから!」

ママを
思い留まらせようとした
私の声を
かき消すように

私のケータイが鳴り出して。


「…こんなタイミングで
誰なんだッ!」

私はケータイを手に取った。


「あ」

運のないヒトは間が悪い。

とは
よく言ったモノで。


「シンスケからだ…」


そうだった。

シンスケのフォローを
すっかり忘れてたッ。


メールを開き見ると

《ちょっと今から
出て来れるかな?》

シンスケらしくない
シンプルなメール文。


…これは相当
参ってると見た。


《もしよければ
ウチに来ない?

シンスケの大好きな
唐揚げもあるよ♪》


シンスケからのメールに
返信すると

《坊主頭を
見られたくないから》

予想通りの返事が
速攻で返ってきたから

《セイなら
今夜は帰って来ないよ》

安心させたのに。


《今
トーコのマンションの前で
待ってるから》

「……」

シンスケにしては
めずらしく強引な。


「難しい顔をして
どうしたんだ?」

私の様子を心配したパパが
私のケータイを
覗き込んでくる。