黒のアーミージャケット。
カーキのパーカーに
黒いゴーグルを
首から垂らし
パチン、パチンと
片手で鳴らしている
その扇子は!
もしかして
「ワンオー…?」
私は思わず
一歩後ろに下がっていた。
シンスケは確かに
ワンオーに
相談しようか、とは
言ってたけど
まさか
ホントにしちゃうなんて!
「シンスケ、ちょっと」
私が
シンスケのジャケットを
引っ張ると
「驚かせてごめんなさいね」
運転席から
オンナのヒトの声がする。
こちらを覗き込んでいる
なつっこい瞳。
「相談者のプライバシーを
守る為だから」
そのやわらかい笑顔に
「あ」
オンナのヒトも一緒なんだ。
私の警戒心が少し和らいだ。
「ヒトが出入りする
ワンオーの事務所や
カフェや自宅だと
彼も話しにくいみたいでね」
「今回の事件のコトで
アナタからも少し
お話を聴きたいんだけど
いいかしら?」
…このおね〜さん
笑顔はやさしいけれど
コトバ遣いは
何気なく上から目線だッ。