レクイエム#017


座り心地の悪い
硬いシート。

取ってつけたような
シートベルトが

車が方向を変える度
肩に食い込んでくる。


進行方向と
逆に座っているからか

おね〜さんの
運転技術が甘いのか

ゆっくりとした
ブレーキに

車酔いしそうになる。


しかも

何だろう

タバコのような
この残り香は…。


「ケホッ、ン」

私のナナメ前の席で
シンスケが咳をした。


「…何か喉の奥が
イガラっぽい…」

シンスケのその意見に
強く同意致しますッ。


「ゴメン、ゴメン。

今朝、保護した少年が
この車の中で
吐いちゃってさ」

ワンオーのおに〜さんが
車の床を
ボールペンで

トントン、と
叩いて見せる。


「シートに臭いが
ついちゃって

消臭剤でも
取れなかったのよね〜」

運転席から
おね〜さんの声が
聞えてきた。


「このお香
浄化の効果も
あるらしくってさ。

咳が出るのは

カラダから
悪い気が出ていってる
からなんだってさ」


軍隊みたいな恰好をした
ワンオーのおに〜さんは

さも
いいコトをしてるみたいに
言ってますけれどッ。


…お香から

余計なお世話の
怪しい宗教のニオイが
しますッ。