「この車も
結構、古いですよね。

俺、中1の秋だったかな。

この車を一度
見掛けたコトがあって…」


シンスケが
車の中を見渡している。


「この車を?」

「間違いないですよ!

このハーフスモーク。

中がどうなってるのか
好奇心を
そそられるカンジですよね」


シンスケってば
偉く嬉しそうじゃないッ。


「ランドセルを背負った
セイがさ。

この車に乗っててさ」


「え?」


「最初はさ。
誘拐でもされたのかと
思って

自転車で
思わず追い掛けたんだけど」


シンスケの
キラキラ光るその眼差しに

私は

慎重なシンスケが
この車に乗った理由を

直感した…。



「セイがこの車の中から
笑いながら
手を振ってくるから

思わず、俺
気を取られて

自転車をガードレールに
ぶつけちゃってさ」


「…そんな話
初めて聞くけどッ」


「そうだったっけ?

俺、あのとき
脳震とう起して

知らない親切なヒトに
病院に
運ばれてたらしくって」

シンスケは悪びれもなく
そう言い放つ。