シンスケが頬を染めながら
当時のコトを
回想しているけれど。
「でも、あの頃とは
きっと
内装も違うんですよね」
段ボール箱の中から
ロープやら軍手やら
ガムテープやらが覗き
消化器が転がっている
この車内は
まるで物置状態で。
確かに
セイが自慢するような要素は
ひとつもなかった。
「シンスケくんが
中学のときって
4年前くらいかな?」
調書に書かれた
シンスケの生年月日から
ワンオーのおに〜さんが
逆算する。
「その頃って
“お姫さま”がワンオーを
仕切ってた頃じゃない?」
運転席から聞えてくる
おね〜さんの声が
尖がっていて
「なら、この車も
派手な内装してた可能性
アリ、かもな」
おに〜さんが苦笑していた。
「……」
今でこそ
恐いモノ知らずの
セイだけど。
あの慎重で恐がりだった
小学生の頃のセイが
ひとりで
知らないヒトの車に
乗り込むなんて
やっぱり
どうしても信じられない。
「あの当時って
ワンオーの活動後援者も
たくさんいたからさ。
お香ひとつだって
いいヤツ使ってた
らしいからな〜」
おに〜さんが
段ボール箱から
白い紙袋を取り出して
乾燥した深緑の葉っぱを
私達に見せた。
「白いヤツだと
もう少し香りも
上品なんだけど」
おに〜さんが手にしていた
その白い紙袋に
印字されている
その薬局のロゴ。
どこかで見覚えが
あるような、ないような…。
だけど
今はそんなコト
どうでもいい。
「あのッ。
当時のコトを知っている
ワンオーのヒトに
お話を訊くコトって
できますか?」
よせばいいのに。
私は封印されていた
“過去のおぞましい記憶”を
無謀にも
開け放とうとしていた。
月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ
レクイエム#017
≪〜完〜≫
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