さっきまで
死人のようだった
シンスケの頬が
みるみる紅潮していって。

「……」

私は恐る恐る
その視線の先を確かめた。


ライトを浴びて演武する
太極拳の使い手達。

一糸乱れない
その動きの中

何故だか
ひとりだけ目立って見える。


シルクの白い中華服。

動きに合わせて
やわらかな光を放っていた。

黒くて長い髪を
後ろに束ねて

金色の仮面。

まるで
月からの使者のような…。


みんな同じ格好なのに
ひとりにだけ目がいくのは
何故なのか。


優雅な仕草。

空気を抱くように
おおきく弧を描く
長い腕。

シャープに風を切る
長い脚。

みんながその動きを
夢中になって見守っていた。


「あれ。真ん中で
目立ってるヤツ。

もしかして
セイじゃないのか?」

「え」

それは
恋する傷心オトコの
直感というモノなのか。


「ははッ、まさか」

まさか、ね…。


「そんなの私ッ
聴いてない…」





月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ

レクイエム#020

≪〜完〜≫


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