レクイエム#021
「黒髪ロングのウィッグ
つけて
変装してるけど
俺には分かる!」
あれは絶対にセイだと言って
シンスケは譲らない。
「あの妖艶なシルエット!
あんな優雅な動きの人間が
この世にふたり
いてたまるかよ…」
とろ〜り
鼻血が滴り落ちてきて
「…ちょっとおおおッ
シンスケえ!」
私の着ていた
パーカーの肩口に
真っ赤なシミがッッ!!
「もおおおおおッ」
さっきまでの憔悴ぶりが
ウソみたいに
自分の鼻血にも気づかず
キラキラと目を輝かせッ。
「……」
見ている方が
恥ずかしいですッ。
「ちょっと
しっかりしてよお」
銀行のザビザビタオルを
私はシンスケの鼻に
押しつけた。
「ぜって〜セイだよ。
間違いないって…」
シンスケは
うわ言のように
同じセリフを
繰り返していて。
ココロここにあらずッ。
…そりゃあ、確かに、ね。
舞台上から
放たれている
タダモノではない
このオーラ。
こうして
背中を向けていても
ひしひしと
伝わってきて。
振り向いて
その姿を確認したいような
怖いような…。
「…ごっくんッ」