それは、おそらく
どこかのお店で
貰ったであろう
営業マンのバラ撒き名刺で。

「あんのおおおお!
騙しやがったなああああ」

「……」

ワンオーのおに〜さんの
アタマの中が
沸点に到達した。


「シンスケ〜…」

どうしてアナタは
そんなコトに気づいて

今、ここで
口に出してしまったのかッ。


「車のナンバー
控えてなかったんですか?

どんなにちいさな事故でも
やっぱ警察呼んだ方が
よかったのでは…」

「ワンオーが
警察の世話に、なんて
笑わせるな!」

「でも、被害者なんだし」

「警察なんて呼んだら
車の中、チェックされて
いろんなコト聞かれて

お前の被害調書だって
当然
あからさまにされるぞ!」

ワンオーの
おに〜さんに恫喝され

「……」

シンスケが次のコトバを
呑み込んで。

「自分の立場がわかったら
ふたりとも車から降りて
後ろ、押せ!」

ってッ
ワンオーってば
何様なのかッ。


「行こう、トーコ」

シンスケが
私の背中を押してくる。

「……」

本当はこのまま
逃げ出しちゃいたかったけど

調書を人質にされた
シンスケを残して
ひとり逃げ出すのは
さすがに気が引けた。