嫌な間合いに
「…どう?、その菓子。
もうひとつ、だった?」
バックミラー越しに
バードさんと目が合って
「美味しいですッ!
特に、これ!」
タマゴみたいな
ミルクみたいな
やさしい味の
「白くて鳥の形のヤツ!」
私はその場の空気を
取り繕うべく
食べ掛けのお菓子を
元気いっぱい
高く掲げるッ。
なのにッ
「あ、トーコ!
車の中でボロボロ
こぼすんじゃない!」
…小姑のような
細かいシンスケに
思わず私の眉間に
シワが寄ったッ。
「食うな、って言ったのに」
ブツブツと
文句を言いながら
私のヒザ小僧に手を掛けて
シンスケが
座席シートの隙間に
手を伸ばす。
「え」
菓子クズを拾い集めていた
シンスケの手が止まった。
「…トーコ。
何を見ても
絶対に声を上げるなよ」
「え?」
マジな目で
シンスケが私の顔を
見上げてくる。
「あはッ。
こんなときに
何の冗談かなッ」
そのあまりの緊張感に
私は思わず笑ゴマしたのに。
「…運転席には
悟られるなよ」
「……」
見つけてしまった
ワケありのヒトの秘密を
シンスケは奥から
引きずり出そうとしていた。
月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ
レクイエム#024
≪〜完〜≫
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