「…バードさん」
血で汚れた服だと
気づいていたのに
寝床でもある車の中に
黙って迎え入れて
くれていたなんて。
こんないいヒトを
こんなにも簡単に
疑ってもいいモノ
なのだろうか。
なのに
「もしかしたら俺達
何かヤバイコトやって
罰として
車を押していたのかも
しれないですよ?」
シンスケってば
そんなバードさんに対して
物凄く好戦的で。
「ちょっと、シンスケッ!」
今日ほど
シンスケのコトを
扱いにくいと
感じたコトはないッ。
「そうだね。
でも
キミ達が何かの事件の
被害者か加害者か
巻き込まれた目撃者かは
知らないけれど
逃走や乱暴する恐れが
ある相手を
ワンオーが
あんな風に無防備に
外に放置するワケが
ないだろうからね」
バードさんの話には
ちゃんと筋が
通っているように思えた。
だけど
バードさんの
その余裕めいた態度に
反発を覚えたのか
「…だとしたら
どうします?」
ニット帽を
目深に被り直しながら
シンスケは変わらず
運転席を睨みつけていて。
「そうだなあ。
菓子に睡眠薬でも
盛っておくんだったと
後悔するかなあ」
バードさんの
ブラック・ジョークに
シンスケがヒザの上で
両拳を握りしめる。