レクイエム#027
「電話、鳴ってるけど?」
「えッ」
「遠慮せずに
出てくれていいよ」
「出てくれて
いいよ、って…ッ」
私はシンスケと
思わず顔を見合わせる。
自分のケータイなら
着信音でわかるよね。
いくら運転中だとはいえ
見ず知らずの私に
出てくれていい、なんて
言うワケがないだろうし。
やっぱり
誰かの忘れ物、なのかな。
だとしたら
持ち主のヒト
すごい心配してるよね。
「……」
私はそっと
ケータイを開いてみた。
「公衆電話から…だ」
やはり
持ち主さんからなのか。
受話マークを押すと
幼いセイとシンスケの
ツーショット写真画像が
目に入ってくる。
…シンスケのお宝を
何らかの形で盗んだ相手。
極度の緊張と
電話に出てしまった後悔が
一瞬のうちに
カラダを駆け廻った。
『…お前、誰だ?』
電話の向こう
ドスの利いた低い声。