「……」

ひとつしかなかった
オレンジ味のゼリー。

当たりくじ5枚で貰える
宝の缶詰。

ホールケーキについた
チョコボード。

一番おおきく育ってた
学校の朝顔の鉢植え。


確かに全部
自分のモノに
しちゃったけれどッ。

どれもこれも幼いセイが
私に気に入られたいが一心で
勝手にしでかしたコトでッ!


第一ッ!

「そんな昔のコトッ
今になって指摘されてもッ」

まさかシンスケが
根に持っていたなんて
思いもしなかったよおおお。


「今だってそうさ!

ワンオーの車での疑問に

お前はひとつだって
まともに答えては
いないだろう!」


「…それは」

その通りなんだけど。

「……」

シンスケのヒトの良さと
セイへの恋ゴコロを
調子よく活用してきたツケが

ここにきて
イッキに回ってくるなんて。


「そんな
捨てられた動物みたいな目で
俺を見つめてきたって

もう
誤魔化されないからな!」


シンスケが
その決意を示すように

ニット帽を
目深に被り直す。


「…スイマセン!
車、止めてください」


「シンスケ!?」

「悪いけど、俺。

トーコのコト
信用できないから」

え。