レクイエム#029


「ったく!

だいたいなあ。

本部に行くのに
どれだけ
時間を掛けてんだよ!」

ちゃんと道
知ってるのか、って

後部座席に座ってる
ワンオーのお兄さんが
身を乗り出してきて。


「ほら、信号が青になったら
その先の道を右折して。

抜け道に出るからさ」

ドライバーの
バードさんに指図する。


「…その道は」

「何?、もしかして
びびってんの?」

「……」

「自殺の名所で
有名だからなあ。

昔はビルの上から

今は横道から

世を儚んだヤツが
飛び込んでくるってか?」


ワンオーのおに〜さんが
からかうように
私とバードさんの顔を見た。


「…自殺の名所ッ」

都心の大通りから
見通しの悪そうな
薄暗い小道が覗いてて。


確かに突然、誰かに
車の前に飛び込まれたら

ハンドル操作を焦って

こっちの身が危なそうだ。