「…バードさん?」

「あ、ごめん、何?」

その空気を取り繕う
バードさんの顔には

さっきまでの
冷たさは消えていて

…ちょっとホッとする。


「いくら徐行して走ってても
よそ見運転は危ないですよ」

「はは、悪い、悪い」

「……」

やっぱり
やさしい顔をした
このバードさんの方が

本質なんだろうな、って

直感的にそう感じたのは
何故だろう。


バードさんは
該当マンションを
通り過ぎると

ゆっくりと
車のアクセルを踏み込んだ。


「自殺の名所なんて
言ったってさ」


この辺りを
夜中にウロついていた
物見遊山な見学者を

通りがかった車が
轢きそうになったり。


自殺現場を

近くで見ようとしたヤツが

足を滑らせて、とか。



「そんなのばっかで

実際のトコロ
自殺者どころか
死者だって
出ちゃいないんだからな〜」

大通りの方が
よっぽど事故とかで
ヒトが死んでる、なんて

ヒトの気も知らず
ワンオーのおに〜さんが
鼻で笑ってる。


「もっとも
ワンオーがしっかりと
自殺防止に努めた結果
なんだけどね」

…自分達の手柄を
強調するのを忘れないのが

とっても“らしい”ぞッ。