レクイエム#031


「ゆっくり車を停めろ」

後部座席から
身を乗り出すようにして

乗っ取り犯が
バードさんに要求する。


メット越しの籠った声。

私は
ヒザの上の毛布に顔を埋め
身を縮めた。


「……」

「停めろと言ってるのが
聴こえなかったのか!?
ああッ!?」

乗っ取り犯の声が
一段とおおきくなる。


「停まりたくないなら

強制的に停めてやっても
いいんだけどな〜あ!?」

ガラの悪い
ドスの効いたしゃべり方。


どういう育て方をしたら
こういう人間に
なってしまうのか

親の顔が見てみたいッ。


「急ブレーキをかけようとか
妙な考え起こすなよ。

こっちには
外に仲間がいるんだからな」

なんて
脅迫すらも陰湿だ。


「…仲間って」