顔を埋めていた
クッションの隙間から
車のサイドミラーを
盗み見ると
後ろの車の運転席を
覗き込みながら
並走している
黒いダウンを着た
バイカーの姿。
「……」
シンスケ達
大丈夫かな…。
なんて
他人の心配をしている
場合じゃないって
バードさんの車のスピードが
落ちた瞬間
私は思い知らされるッ!
ガガン、と
私が身を縮めていた
助手席のシートが
突然、前方に押し出されッ!
「…ぶぎゅうむ」
「トーコちゃん!」
バードさんの
私を心配する声を
「触るんじゃねえッ!!」
乗っ取り犯の怒号が
かき消し
車が停まる気配がした。
「……」
「……」
「……」
水を打ったように
静まり返る車内に
不安ばかりが
広がっていく。