レクイエム#033


「…何よッ!」

自分達だけわかってるぞ、と
言わんばかりのその空気ッ!

「だいたい
セイのその恰好は
何なのよ!

家を出て行ったときと
全然違う服装じゃないッ!」

助手席から身を乗り出して
後部座席のセイの
ベンチコートの胸元を
掴むと

「んッ?」

セイの胸元に
硬くて平たい異物感…。


「何…?、これ」

「……」
「……」

私のツッコミに
セイの表情が
固まったように見えたのは

私の気のせいでは
断じてない。


「…まさか。銃、とか?」

ベンチコートの中の
固形物を掴む
私の手の形を見て

ワンオーのおに〜さんが
息を呑んだ。


「…ふふん」

余裕ぶって
鼻で笑いながら

自分の胸元を掴んでいる
私の左手を

セイは
自分の口元に近づける。