「セイッ」

私が怒鳴るのが早いか

ワンオーのおに〜さんが
セイの横っ面を
張り倒すのが早いか。

パシイ!

短い破裂音。

セイの白磁のような頬が
みるみる真っ赤に
腫れ上がった。


「…あ」


あれだけ挑発まがいな
態度を取っていたら

当然の報いだとは思うけど

本人としては
まさか、の反撃だったのか

「ぺッ」

油断して口の中を
切ってしまったらしく

セイが血の混じった唾を
吐き捨てる。


「ちょっと
何やってんだよ!」

私の大声に驚いたテルさんが
ケータイを片手に
運転席のドアから
後部座席を覗き込んできて

「うわ、ひでえ…」

セイの痛ましい頬に
眉をひそめた。


「わざとじゃないぞ!

コイツが逃げようとして
暴れたから…!」

「ビンタした、と?」


テルさんの追及に

「…お前らッ
俺をハメようとしているな!

その手には
乗らないからな!」

ワンオーのおに〜さんの
語気も荒くなる。