「ちょっと、セイ!
ホントにヤバいって!」
どんなに
セイに邪険にされても
ここで引き下がったら
きっと後悔する。
私は
シートに脱ぎ捨ててあった
セイのベンチコートで
ガラスの破片を
床に落とし
身を乗り出して
セイの腕を捕まえた。
「とにかく
セイもこの車から出て!
冷静に話し合おうよ」
「……」
「ね?」
「……」
「ねえってばッ!」
セイの顔を
私の方に向けさせようと
セイの肩を掴むと
ペシ!
私のオデコを
セイが指ではじいて
私の配慮を拒絶するッ。
「…ワンオーを
敵に回そうなんて
それ相応の覚悟が
あるんだろうな?」
ワンオーのおに〜さんの
脅迫めいた口調に
「はぁ?
俺、今、アンタ個人と
話してるんだけど?」
セイってば
売られたケンカを
高値で買い取り
しちゃっててッ。
「セイ、お願いだから!」
ここは
私も一歩も譲るワケには
行かなかったのだけど
何の因果か
こんなときに
こんなタイミングで
私のポケットの中で
ケータイ電話が鳴るなんて!