「ほら、電話だぞ。
早く出てやれよ」

いつまでも
鳴りやまない
私のケータイ電話に

ワンオーのおに〜さんが
さらに苛立っているのが

手に取るように
伝わってきて。


「……」

私はポケットの中

手探りで
ケータイの電源を
切ろうとした。


のに!

「ウチからの電話だったら
どうするんだ?」

なんてッ

私の心配など
無用だと言わんばかりの
セイのその態度に

カチン、とくるッ。


「私に
電話に出て貰いたかったら

セイもこの車から
降りてくれるかなッ」


セイの腕を再び掴もうとした
その瞬間。

振り返ったセイに

「あ」

私のケータイ電話を
取り上げられた!


「ちょっとッ!?

私のケータイ!、返して!」


そんな訴えも空しく

「ふん」

私のケータイは
セイの手によって

ガラスのない車の窓から
真っ暗な道路へと
投げ出され…!!!!


「あああああ…」

信じられないッ。


「ほ〜ら
早く取りに行かないと」

「……」

「溝の中に落ちちゃってたら
大変だぞ〜」

なんてッ

そうまでして
自分の我を
押し切りたいのかッ
このオトコッ!


「もおおおおおッ」

悔しかったけど
私は車を飛び出して

真っ暗な植え込みの中で
5色の色を放ちながら
鳴り響いている
自分のケータイを
レスキューした。


「あれ」