「現場を目撃したら

すぐに報告をあげなきゃ
ダメだろう?」


「…申し訳ありません!

ちょっと
この方達がゴネ…、いえ
素直に話をしようと
しなかったので」

外のオトコに答えてる
おに〜さんの目が
あきらかに
キョドっていて。


しかも“この方達”って。
私達のコト、だよね。


“ゴネて”って表現を
わざわざ直したりして

さっきまでの
俺様天下な態度と
エラい違いだ…。


ドアが開いたというのに
顔を上げるコトなく

おに〜さんは車の中で
さらに
ちいさくなっている。


「……」

お揃いのパンツに
厳つい軍靴。

地面に向けられたライトに

車の外のヒト達が
ワンオーのお仲間で
あるコトは

その足元だけで
確認できた。


「……」

ずいぶんと汚れた
軍靴だなあ。


このおに〜さんのも
青っぽいシミがいっぱい
ついているけれど

テカってるトコロと
そうでないマットな部分が
ライトの下では

コトの外
よく目立っていて。


「このオトコに
何か無礼なコトは
されなかったかな?」

オトコがゆっくりと
車の中を覗き込んでくる。


「……」

ゴーグルの下の細い頬。
短い三角形の眉。

アタマに被っていた
パーカーから

整髪料で固めた
アブラっぽい黒い髪が

見るからに
ヤバそうな雰囲気だ。