だけど。

「ああ、ごめんね。
これ、恐いよね」

オトコは掛けていた
ゴーグルを少しずらすと

細くてちいさな目で
私にやさしく微笑んできた。


「……」

パパと同い年くらいかな。
もう少し若いのかな?

整髪料のカンジが
50年代のバイク乗り
みたいだ。


「ガラスに気をつけて。

ひとりで
車の外に出れるかな?」

そのヒトの紳士的な態度に
ちょっと安心したりして…。


もしかして
ワンオーにも
いろんなヒトがいて

このおに〜さん
みたいなヒトが
ひとりでワンオーの評判を
下げているのかも…。

チラリ、横目で
ちいさくなった
おに〜さんを見る。


「あは」

話をわかってくれそうな
ヒトが現れて

とにかくこの場は
なんとかなりそうだ。


「セイ。
とりあえず車の外に…」

安堵して
身を起こそうとした
私の背中を

セイがグッと掴み直し

「!」

私のカラダを引き寄せた。

「セイ…?」

「……」

…さっきまでの
ワンオーのおに〜さんを
小バカにしていた笑みが

セイの横顔から消えている。


いつになく
厳しく険しいその表情に

「…どうか…した、の?」

セイの瞳が見つめるモノを

顔を上げて
私が確かめようとした

その瞬間!


ドガッ!

私の背中が
何かに踏みつけられた!