まさか
石焼ビビンバもどきの中身が
パソコンとは露知らずッ!

「デ、データとか
大丈夫ですかッ」

「ああ。データは
バックアップ取ってるから
いいんだけど…」

「いいんだけど…?」

「……」

どうしてそこで
口籠ってしまうんですかッ!


「…まさかキリエさんが
この薄暗がりの中
やってくるなんてさあ」

「え」

キリエさん…?


「……」

テルさんの視線の先には
素足にカーディガン姿の
キリエさんの姿があって。

それは

まさに連絡を受けて
飛び出してきました、って
様相だったけど。


「信じらんないよね」

テルさんがまた
溜息をついている。


「?、そうですか?」

「……」

「だって。

探していた娘さんが
見つかったんだから
親なら当然…」


「そ〜おおおお
なんだけどさッ!」

「え」

「フ、ツ、ウ、ならね!」

私のツッコミに
アタッシュケースを開ける
テルさんの手が
乱雑になった。


「ったくさッ!
今日は次から次へと
想定外なコトばっかり
起こってさッ。

まったく、なんて日だ!」

「……」


“想定外”…。

その響きに

セイがまた
何かよからぬコトを
企んでいたのでは、と

邪推してしまうのは
私だからでしょうか…。