「…ええっと。
たとえば
キリエさんがここに来ちゃ
マズいコトが
何かあったとか?」
ニッコリと微笑みながら
それとなく
聴き出してみようとした
私の狙いを見透かすように
「……」
テルさんが
ゆっくりと顔を上げ
私を見つめたりしてッ。
「あッ!
なんでもないですッ。
カンケイないのに
ごめんなさいッ!!」
あはははは、って
笑ゴマしてみたりするッ。
「…トーコちゃんってさ」
「あはははは?」
「キリエさん
見ていて気づかない?」
「あは…?」
「満足に見えてないんだよ。
あのヒトの目」
え。
「……」
「……」
「見えて、ない…?」
「ワオオオオ、オン!」
「……」
だって…。
「セイの傍まで迷わず
ひとりで歩いていたし!」
「視界の真ん中が
暗く抜けてる状態って言えば
わかる?
上下両端はなんとか
見えてるみたいだけどね」
「……」
車の外に目をやると
首を忙しく動かしている
キリエさんの姿があって。
言われてみれば、確かに
話をしている相手の姿を
自分のわずかな視界の中に
捉えようとしているようにも
見えなくもなかった。