「ったく!

さっさと娘と引き合わせて
この案件から
早く解放されたいぜ」

テルさんは
アタッシュケースの中
真っ赤な緩衝材に守られた
パソコンを起動させ

バードさんの残した
運転免許証を読み込ませる。


…だけど。

「バードさんが
キリエさんの娘だった
なんて」

不思議な繋がり。


小学時代
セイの背中の火傷の秘密を
守り続ける為に
協力をし続けてくれた
恩人だってコトは

私もセイから
直接聞いてはいた。

けれど。


「あれ?」

「何?」

「セイは確か
保健室の先生のお子さんは

イジメが原因の交通事故で
亡くなられた、って…」

ラブホテルのプールの帰り
セイは
確かにそう言っていた。


「あ。子どもが
もうひとりいたとか…」

「捜索の為にいろんな書類も
覗かせて貰ったけど

間違いなく、ひとり娘だよ」

テルさんが華麗に
キーボードを叩いていて。


…それは不正アクセスの
結果ですか、とか

ツッコむのはぐっと堪えた。


「結婚して2年で離婚。

父親についていった娘が
父親の死で
母親に引き取られたは
いいけれど

上手くいかなくて

結局は父親の田舎に
戻されて、ってカンジ
だったみたいだね」

娘としては相当、不満は
あったんじゃないの、って

テルさんは
そう付け加えたけれど。


「だからって…」