でも。

近くにあんな
おじいちゃんが居るのなら

「田舎になんか戻らなくても
おじいちゃんと一緒に
暮らせば…」


「無理無理無理ッ!
あのヒト変わり者だから
敵も多いし」

「え?」


「あのワンオーにだって
絶対アタマを下げないから

いろんなウワサ
立てられちゃったりさ」

「ウワサ?」


「…トーコちゃんは
この街の人間じゃないから
知らないかもしれないけど

この街には
表沙汰にならない
通り魔事件が
頻発していてね」


「あはははは…」

知ってたりして。


「…通り魔事件に
遭遇してるのは
あの店の客ばかりだ。

ワンオーと連携しないから
通り魔のカモに
されるんだ、って

言われ放題でさ」


「…それって」


“あの太極拳の参加者は
特別だから…”


「……」

タクシーの運転手さんとの
会話が
私のアタマの中に蘇る。


「そんな頑固じいさんも
孫がこの街にいるらしいと
知って

さすがに孫の身を案じ

ワンオーとの連携を
考えたみたいなんだけど」


「…だけど?」

「あのヒトが
大反対しちゃってさ」

テルさんがアゴで
車の外を指し示した。


「キリエさん、が…?」