ストラップを
指先で摘まむようにして
ケータイを見つめていた
私を見て

「もしかして
それ、トーコちゃんのじゃ
ないの?」

テルさんが図星する。


「…はは。違いますね」

ちいさな声で答えてる
私の手元に手を伸ばし

「そのストラップの先
何かついてる…」

テルさんが
ストラップの先っぽを
指で挟み擦ると

ポロポロと青い粉が
落ちてきた。


「青の…ペンキ?」

テルさんの口から
発せられた
そのキーワードが


“アタマから
ブルーのペンキを被った
ハダカのオンナノコを

保護したコトとか
ありますから”


私の記憶の中から
タクシーの運転手さんの
証言を蘇らせる。


…一連の通り魔事件が

1台のケータイの存在で
繋がった…?


「……」

「…トーコちゃん?」


鳴りやんだ着信音。

静かになったケータイの
その存在感が

あまりにも不気味すぎだ。


「このケータイ
暗証番号で
ロックされてるみたいだね」

テルさんの繊細そうな指が

私の手からぶら下がっていた
黒いケータイを取り上げて

パソコンに繋ぐと

「4ケタの暗証番号なら
解析可能だから」

テルさんがキーボードを
再び叩き出した。