「アイツには
オヤジの工場のピンチ
助けて貰ったり

今の仕事だって
セイの口利きが
なけりゃ、ね」


今の仕事って…。

「ネットカフェの
店員さん?」

「あれは世を忍ぶ仮の姿!
本業はDF!

デジタル・フォレンジング」


「デジタル…?」


「不正アクセスや
機密情報漏洩など

コンピュータに関する犯罪や
法的紛争が生じた際に

原因究明や捜査に必要な
機器やデータ
電子的記録を収集分析し

その法的な証拠性を
明らかにする
手段や技術の総称!」

「……」


「まあ、デジタル鑑識
みたいなモンかな」

テルさんの
パソコンの画面を見つめる
目が冷たいッ。


でも。

「…それって」

デジタル犯罪の
証拠を掴む仕事に
ついているにも関わらず

まさに、その立場を悪用して

セイの為に
尽くしてる、って意味で。


「アイツにはホント
借りがあるからな」

テルさんが
自嘲気味に笑っていた。


そりゃあ、そうだよね。

やらされてるコトの
リスクを考えたら

そんな“借り”なんかで
自分の人生棒に
振りたくはナイのが
本音だろうに。